「<売れる哲学書>のつくり方」と「ヘーゲル(再)入門ツアー」に行ってみた@東京堂ホール
先週の日曜に、こちらのイベントに参加したので、感想を書いていきたいと思います。
ポピュラー哲学書の位置付けと読者目線
まずは<売れる哲学書>の方から。
今回のイベントで重要なのは、「ポピュラー哲学書」の位置付けとその機能のように思う。
というのも、そのポピュラー化が、<売れる>ための努力の一つだからだ。
ただ、あんまりその定義が明確でなかったように思った。
もちろん、結局のところはグラデーションなのであって、明確に定義づけるというのは難しいのかもしれないが、例えば「自己啓発」と「ポピュラー哲学」は何が違うかとか、そういう目線から話を聞きたかった。
ひとつの回答として「出版社によって分けられる」というのもあったが、正直読者にとってみれば、出版社はどこでも良いような気がする。ポピュラー哲学に興味をもつような購買層にとっては、出版社の差異は特に気にしていないのではないか。
あと、装丁を工夫したものという回答もあったが、本当にそういうことでいいんだろうか。
超訳ニーチェの言葉は、ポピュラー哲学書というより、自己啓発な気もするのだが。
で、考えていて思ったのは、やっぱりこのイベントは「哲学者と編集者で考える」のであって、そこに「読者」が居なかったなと。終了後の名刺交換会を見ていても、「あ、私お呼びでなかった...?」という感じがちょっとした。
プレゼンやお話の中での読者は、あくまでマスとして、数字として扱われていた。
それは、昨今の状況によっては仕方のない部分だし、<売れる>ということは大事なのだから、理解できる。
唯一(?)読者目線の発言があったのは、登壇者のうちの一人である酒井さんで、
「高くても、内容が良ければ買うんですよ。問題は、内容の良い本がどれなのかが分からないこと。」
と言っていた。会場内でもうなずく人が多かったのではないか。
つまり登壇者の中には、読者目線の方が実はあまりいなくて(そしてそれは、実はタイトルで予告されていて)、出版社と執筆者の間で展開されていったという感じ。
お話自体はとても面白かったのだけれど、どこか疎外感のあるような感じだった。
アカデミックな空気感
第二に、前日にゲンロンカフェでイベントに参加したこともあるのだろうけど、全体的にかしこまった印象を受けた。
一人ひとりパワポを用意して、時間通り話が終わるなんて、ゲンロンカフェではありえない。
発表後のディスカッションについても、あらかじめ質問と回答がある程度決まっていた。
もちろん、この形式がダメというわけではないのだが、もうちょっと引っ掻き回す人がいても良かったのではないかと思ったりする。予定調和な気がして、この場で何かが創造されているという印象はあまり受けなかった。
会場の時間などもあるわけで、そこら辺は現実との兼ね合いもあるし、どっちが良い悪いという話でもないのだが。
質問の仕方について
第三に、質疑応答の方法にちょっと驚いた。
今回は、イベント中に質問フォームに書き込む&質疑応答の時間に挙手で行うという二刀流だったのだが、ちょっとどうかなーと思う。
いろんなイベントに参加して思うが、確かに、何が言いたいのか分からない質問であったり、質問ではなくただの主張だったりすることが非常に多い。
私が公務員1年目のときに教えてもらいたかったこと(その1) - かつげんの拠り所
ここでも書いたけど、質問の仕方というのは重要で、それによって相手がどう答えるかも変わってくる。
そういう意味で、事前に「フォームに書き込む」という形で自分の質問を整理させる(という意図があったかは分からないが)のは良いと思う。また、フォームに書き込むことで記録として残ることから、後日回答できるというメリットも有る。
しかし、その方法を取るなら「誰か取り上げたい質問ありますか?」といった抽象的な投げかけではなく、「◯◯さん、気になる質問ありますか?」などと、登壇者を積極的に指名するべきだったし、それをやるなら挙手制は必要なかったように思う。
正直「え、頑張って頭使って書いたのに、挙手もありかよ~~~」となったし、取り上げられないからといって挙手すると、単にアピールがウザい人になってしまう気がして、躊躇してしまった。
この方式については、今回始めて導入したということだったので、今後また検討されることになるんだろうと思う。
個人的には、普通に挙手制で良いのではないかと思っているし、質問がなかったら、登壇者同士で質問し合うのも良いと思う。多くても5問ぐらいしか出ないと思うし。
最後に、質問とは関係ないのだけれど、稲岡さん(ちゃんと覚えています!)と酒井さんは、ゲンロンカフェに一回呼んで欲しいなーと思った次第。個人的な願望ですが。
ヘーゲルは難しい!
続いて、ヘーゲル(再)入門ツアーについて。といっても、見出しでオチているようなもの。
ヘーゲルという人物は、名前は知っているし、「現存在」と「アウフヘーベン」ぐらいは知っていたが、こんなに難しい文章を書く人物だとは思わなかった。
川瀬さんが「分かんないですよね、こんなの」と言ってくれたのが、結構助かった。周りには猛者がたくさんいて、難読文もスラスラ読めてしまう人だらけだと思っていたから、ああいう形で相対化(ツッコミ)を入れてもらえると、安心する。
一番面白かったのは、カントとのつながりでヘーゲルを捉えていたところ。
ある哲学者を勉強する際に、その哲学者単独で勉強するのではなく、流れの中でまずは大ざっぱに捉えるということは、理解に繋がるのだなーと思った。
また授業の仕方についても、哲学の授業において「周りの人と話し合ってみましょう」という授業はあまり聞かない。
もちろん「哲学対話」や「哲学カフェ」という形もあるのだが、あれは対話すること自体を重視している取り組みで、答えがない。今回は、対話した上で答えがあるので、ちょっと異なる。
ざっくりした感想としては、私はヘーゲルの前に、そもそもの哲学史を勉強すべきではないかと思ったので、図説・標準 哲学史を購入。まずは3冊ぐらい哲学史を読もうと思った。
雑感
勢いで書くと批判的な感じなってしまっている。「振り返り」=「批判的に見る」という癖があるのだろうか。
哲学漬けのこの土日だったが、とても有意義な時間だった。
また勉強し始めないと。。。