地方公務員は異動が付き物だ。
いつどこに異動になるのか分からない。すべては任命権者の考え次第であって、それぞれの職員は希望を出すことは出来ても、拒否することはできない。
この状況にたいして「公務員とはそういうものだ」という意見もあれば、「職業の自由選択や労働市場の流動性を阻害している」という意見もあるだろう。
いずれにしろ、地方公務員として働く以上、何年かに1回は異動になる。
この事実に対して、不安になっている人もいるようだ。
先日、ある後輩から相談を受けた。
「そろそろ私も異動かもしれないですよね」
「次の部署でもやっていけるか不安です」
とのこと。
この後輩は新規採用で配属された。つまり、初めての部署が今の部署なのだ。だから次の異動が初めての異動ということになる。それは不安になるのも分かる。
ただ、自分の異動のときを考えてみると、不安はそれほどなかった。もちろんそれなりの緊張はあったが、心臓バクバクというわけではなかった。「まぁなんとかなるだろう」という感覚の方が強かったように思う。
後輩からの相談に対して、結局私は上手く答えることが出来なかった。そして「この後輩と私の違いはなんだろうか」と、帰宅してから考え込んでしまった。
せっかくだから、考えながらブログに残したいと思う。
異動の不安は、2つに分けることが出来る。
1つ目は、異動先での仕事に付いていけるかという不安(仕事の不安)
2つ目は、異動先での人間関係がうまく行くかという不安(人間関係の不安)
1つ目の不安に対しては、「どこでも必要になるスキルを身につける」ことが大事だ。
メールの書き方、起案の仕方、書類の整理といった部分はもちろんのこと、質問や相談の仕方、調整の仕方なども、「どこでも必要になるスキル」と言える。
こういったスキルに対して、自分に合ったやり方を確立していると、どこへ異動しても転用することが出来る。基礎スキルの習得に割り振っていた力を専門業務に注げるから、仕事の習得も早い。
このような自分のやり方を確立するためには「ミスをしたときに、反省して改善する」という営みが必要だ。
「ミスしたまま改善しない」という人は意外と多い。
そういう人は、ミスを偶然起こったものだと考えている。だから反省することなく「次は大丈夫。ミスなく出来る。」と考える。
つまり、自分のクセや構造的な要因がミスの根源に存在するとは考えない。
逆に言えば、ミスがあったときに「たまたまミスした」と考えず、構造的に反省し、次に生かす営みを繰り返すことで、自分のクセが分かってくる。
この繰り返しは、同時に、自分にあったやり方を確立することでもある。
そして、一番大事なのは、次に生かす営み自体を繰り返すこと、つまり「自分に合ったやり方を確立する方法」を確立することである。フレーズ的に言えば「”成長の技術”を身につけること」だ。
自分をモニターすること、再帰的に捉えなおすクセを付けることは、どこへ異動しても、どんな仕事でも役に立つ。
2つ目の不安については、正直どうしようもないのではないかと思う。
どういう相手と仕事をするのかは完全にランダムで、「出たとこ勝負」である。まさに「コミュ力」が求められる。
ただ、心構えとして言えるのは、「我々は仕事のために職場に来ているのであって、友達を作りに来ているわけではない」ということだ。
どんな人と仕事をするにしろ、仕事の成果は出さなければいけない。
そういう意味で、異動における人間関係の不安を軽減するためには、「仕事」という目的を噛ませるとよいかもしれない。
それが「仕事のために、同僚と仲良くしておこう」なのか「同僚に嫌われても、仕事さえ出来ていればいいや」なのかは、職場の状況によるだろう。
しかし少なくとも「人間関係は、仕事をするための環境要因であって、目的そのものではない」という思考回路を用意しておくこと(別に「友人」になることを妨げるわけではない)は、人間関係の不安を軽減させるために重要だ。
そんなことをざっくりと後輩に伝えると、「まぁそうですよね~、頑張りますっ!」と理解したんだがしてないんだか、よく分からない回答。
そろそろ「ウザいおじさん」になってるかもしれないなと思った。