福祉事務所にはベテランケースワーカーが居る。
経験豊かで、いろんな制度のことを知っている。事務処理も早い。
しかし頼りになるかと言われれば、必ずしもそういうわけではない。
ベテランケースワーカーは、いろんなことを知っている。しかしその知識は、経験に依存していることが多い。「前にこういうことがあった」「関係者がこう言っていた」という積み重ねが、経験となり知識となっている。
ただ、こういった経験に基づく知識は、正しいとは限らない。その時はそう対応しただけで、客観的な正しさが成り立つわけではない。間違った知識だったり、今は通用しない以前のやり方を新人に教えてしまうこともある。
こういった人を見ていると、「仕事に慣れること」と「仕事が出来ること」を勘違いしてはいけないなと思う。
長く特定の仕事をしていれば、事務処理は当然ある程度は早くなるし、イレギュラーな対応にも慣れてくる。それによって、周りから頼りにされることもあるだろう。
しかしそれは、本人の能力がどういうものであれ、時間をかけたから“慣れた”のである。逆に「仕事が出来る」というのは、本人の能力(地頭と言ってもよいだろう)に注目しているのであって、いかに時間をかけずに慣れるかということだ。
「能力×時間=習熟度」という単純な式を仮定すれば、習熟度が高いからと言って、本人の能力が高いというわけではない。
時間を掛ければ誰でも仕事が出来るようになる。しかし、長く特定の仕事をすればするほど、それを忘れてしまい、自分の能力自体が高いのだと錯覚してしまう。
「人のふりみて我がふり直せ」という事例を間近で見てしまったので、記録のために書いておいた。