かつげんの拠り所

1992年生のしがない子ども福祉系地方公務員のブログ

”無敵の人”に出会った

何年か前、ある介護施設に入所しているおじいちゃんが、窓からテレビなどを投げたというトラブルがあった。施設から「危ないからなんとかしてくれ」といわれ、「なんとかしてくれと言われても、どうも出来ないだろう」と思いつつ、ひとまず本人に会いに行った。

面会室にやってきた人は、杖をついて歩く、ちょっと癖の強そうなおじいちゃんだった。

「なぜ窓からモノを投げるのか?」と聞くと、「イライラしたから」だそうだ。

続いて「人に当たったらどうするの?」と聞くと、「別にどうもしないよ」とのこと。

「捕まるかもしれないよ」には、「それはそのときだろ。どうせすぐ死ぬよ。」
「賠償することになっちゃうかもよ」には、「カネがないんだから、賠償しようがないだろう」

とのこと。

これは困った。ここまで来ると付ける薬もない。ひとまず、面と向かって注意しただけでも効果はあると思って、帰ることにした。

当然若くはないから、トラブルの背景には認知症的な面もあるのかもしれない。面談途中で易怒性も見られた。しかしコミュニケーションはできるし、話の筋も理路整然としている。というか、論理的に考えた結果、開き直っている。

こうやって振り返ってみると、もう少し共感的なコミュニケーションをしてもよかったのかもしれない。ただ、論理構造や本人の態度は、いわゆる”無敵の人”というやつだった。

こういう論理を持ってくる人に、どう対応したらよいのだろう。未だに分からない。

ちなみに、面会の後はモノを投げる行為は収まったらしい。しかし、収まったからいいものの、そもそも私には「直接会って、話をする」ぐらいしか手札がなかった。つまり、最初で最後の切り札だったわけで「面談後も問題行動が継続して、もし誰かに怪我をさせていたら...」と考えると、ヒヤッとする。

これで「担当ケースワーカーにも責任があるのではないか?」などと追求されたら、ひとたまりもないなと思った。