かつげんの拠り所

1992年生のしがない子ども福祉系地方公務員のブログ

「私たちはミスをする動物だ」と思い出すこと

単純作業でミスをするのは、自分を信頼しているから

職場で年度末の文書整理を行った。
それぞれ手分けをして、書類を箱に入れたり、キャビネットにしまったりということをしていた。

私は、これに登場する「新人」がやっていた文書整理を手伝っていた。

彼がやっていたのは、

1.キャビネットに入っている書類を出す。
2.キャビネットから出した書類と、別に保管していた書類と一緒にして、決められた順番に並び替える。
3.並び替えた書類を順番にキャビネットへ入れる。

というものだ。
なんのことはない、ほとんど頭を使わない、機械的な作業といっていい。

しかし、彼のやり方を見ていると、どうも危なっかしい。

まず1について、作業に十分なスペースを考慮していなかった。
そのため、出した書類に自分自身が埋まっていくような形になっていた。
そのうち、だんだんとスペースがなくなっていき、彼は「スペースをどうやって捻出するか?」ということにも頭を使うようになっていた。

また彼は、2と3の作業を同時にやろうとしていた。
つまり「別に保管していた書類をどこに入れればよいか」を頭で覚えながら、キャビネットから出した書類と別に保管していた書類と一緒にして並び替えを行い、別のキャビネットに入れるということをしようとしていた。

「このやり方じゃいつかミスるぞ...」と思いつつ、指摘するのも違うと思い、そのままにしていたのだが、結局、入れ間違いがあって「手戻り」が生じてしまった。

この姿を見て、「あ、昔の俺だ」と思った。

昔の私は、私自身を信頼しすぎていた。
というか、自分の限界や特性について無知だったという方が、正確かもしれない。

しかし、いろんな経験をしていくうちに「俺は、結構ポンコツだ」と思うようになった。

そういう意味で、彼はまだ「俺は、結構ポンコツだ」と気づいていない。

ポンコツ流仕事術

「俺は、結構ポンコツだ」と思うようになった私は、先ほどの作業を与えられると「うわ、この作業は絶対ミスするわ」と、まず直感的に思う。
そして「どういうミスを犯すんだろう」と先回りして想像する。

つまり「俺は絶対どこかでミスをする」という前提に立って、そのミスを具体的に想像し、それを潰していくような工程を考えなければならない。
ミスをしない自分を前提にして工程を考えても、それは都合のいいことしか考えていないということであって、結局は、何も考えていないのと一緒だ。上手くいっても偶然である。

ここで大事なのは、事前に頭を使って考えるということだ。

私がよくミスをするパターンは、「頭を使いながら作業する」というときだ。
最近でも、5合の米を炊こうと計量カップで測りながら別のことを考えた結果、4合分しか入っていなかったという事件があった*1

「頭を使いながら作業する」ということは、つまり、目の前の作業に集中していないということだ。
頭と身体は同時に動かしてはいけない。頭を先に使って、身体を後に使う。
工程を考えているときは、「出来るだけ頭を使わない方法」を考えるべきだし、作業をしているときは、何も頭を使わないで行うべきだ。

そこで「出来るだけ頭を使わない方法」とはなにか。

一番考慮すべきは、「シングルタスクに切り分ける」ということだ。
あれやこれやと、同時並行で物事を進めない。一つずつ順番に積み上げていくことでしか、仕事は完成しない。
もし期限が迫っていて、同時並行でやる必要があるのなら、協力してくれる人を募るべきだろう。

仕事相手を信頼しない

 以上のような話は、結局のところ、私が私自身の能力を信頼していないことから生まれる。
「俺は、結構ポンコツだ」という認識から始まっている。

これは、他者と仕事をする上でも大事な考えだ。

相手に全幅の信頼を置かず、「もしかしたらミスるかもしれない」と考え、先回りしてミスの可能性を潰しておく。
提出期限の催促などはその一例だろう。

こういった態度は失礼だと思う方もいるだろうが、しかし、相手のミスによって影響を受けるのは自分である。
もしかしたら、「相手のミスで自分の仕事がやり直し」なんてことも考えられる。

もちろん、相手を信頼することが基本的には重要である。
しかし、全幅の信頼は置かないこと。いつ相手がミスをして、自分の仕事が手戻りになってもいいように対応し、仕事を進めていくことも重要なのだ。

私たちは、同僚と仲良くなるために通勤しているわけではない。
確かに仲良くなることは仕事を円滑にするかもしれない。しかし、一度ミスが起これば「癒着」とか「仲良し」という言葉で片付けられてしまう程度のものだ。

同僚と仲良くなるのではなく、同僚から信頼を得ること。

その順番を間違えてはいけない。

私たちは、思っているほど賢くない

書いてきたように、「私たちは、思っているほど賢くない」と思うことは、大事な態度のように思う。

ミスをしない人間などいないし、これまですべての人間関係が円滑だった人間もいない。

しかし、なぜか仕事となると、こういったことは忘れられてしまう。
私たちは決して「俺って賢い」と思っているわけではない。そんな自己愛の強い人間ではない。
ただ単純に「私たちはミスをする動物だ」ということを忘れてしまっているだけだ。

だから思い出せばいい。

思い出すだけで、自分のミスは減り、相手のミスに寛容になれる。
「自分の仕事に責任を持つ」ということは、そういうことの積み重ねのような気がする。

*1:ちなみに、この問題は5合分入る大きい計量カップを使用することで解決した。